【校長室だより】

1. 令和6年度 第120回卒業証書授与式 式辞

投稿日時: 03/09 校長

 旅立ちの春を迎え、素朴な土の香り漂う今日この佳き日に、第120回卒業証書授与式を挙行できますことは、卒業生はもとより、私たち教職員、在校生にとって大きな喜びであります。本日晴れの日を迎えられた卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

 保護者並びにご家族の皆様、本日は誠におめでとうございます。卒業の日を迎えられたお子様の立派な姿に、感慨も ひとしおのことと存じます。また、これまで本校にお寄せいただきました数々のご支援、ご協力に深く感謝申し上げます。

 卒業生の皆さんは今、どのような思いが胸に去来していますか。この3年間、コロナなどの感染症や自然災害に加え、戦争、人権・食料・環境・エネルギー問題など、大きな社会変動を目の当たりにしてきました。こうした中で、現実をしっかりと受け止め、力強く歩もうとする皆さんの姿に幾度となく勇気づけられました。部活動や各種大会での全国レベルの活躍はもとより、県内各地で、また、秩父郡市内で開催された各種イベントへの参加・協力など、大活躍し てくれた皆さんを、私は誇りに思います。おそらく、在学中の印象深い場面が一人一人の脳裏に甦っていることでしょう。それらすべてが「経験」という名の財産であり、かけがえのないものとして、皆さんのこれからを支えてくれるはずです。

 こうして皆さんの前でお話しするのはこれが最後です。お伝えしたいことが二つあります。

 一つ目は、「人間力」についてです。

 皆さんが生きるこの先の時代、どんな未来が待ち受けていると思いますか? また、変化の激しい時代を生き抜くために必要な力とはどのようなものでしょうか?

 例えば、今は「ChatGPT」のような生成AIが話題になっていますが、この先どんな仕事が生まれるのでしょうか? 真っ先に頭に浮かぶのが企業ごとの専門性や個性を兼ね備えた生成AIを使いこなす「AIトレーナー」。これまでは、コンピューター好きの人たちはシステムエンジニアを目指すのが定番でしたが、今後は農機メーカーや養殖業など、意外なAI活用企業に就職していくのかもしれません。例えば、農業はすでに機械化が進んでおり、農地を耕し、種をまき、収穫する農業機械(トラクター)は、人間から指示された作業工程を、GPSで位置情報を確認しながら無人で作業する「ロボットトラクター」に進化しています。ヤンマーがフェラーリの元デザイナーを起用して作った、かっこいいデザインのロボットトラクターなども登場しています。人間に必要不可欠な食糧や健康などの分野で、新しい仕事がこの先どんどん増えていくことでしょう。

 では、この先必要な力とは何か?新しく、かつ需要のある仕事を生み出すのは、「困っている誰かのために」というような、仕事の目的や意義を常に考えられる人たちだと私は考えています。簡潔に言うと「人間力」のある人。デジタルが当たり前になっていくにつれて、今後ますます必要とされる力だと思います。

 二つ目は、「一人で悩まない」ことです。

 皆さんが今後、仕事や学業に携わる中で、壁に突き当たることや挫けそうになることがあると思います。「職場や学校の雰囲気に馴染めない」、「人間関係がうまくいかない」、或いは、「仕事や勉強の内容が想像していたことと違う。自分に合っていない。」など、こうした悩みは、多かれ少なかれ誰しもが経験することです。

 大切なのは、自分一人で悩まないこと。自分で抱え込んでしまっては、我慢するか、その状況から逃れるといった結論にしか至りません。周囲に助けを求めることをためらわないでください。信頼できる上司や先輩、友人、家族に相談して、たくさんアドバイスを受けてください。母校の先生方でも結構です。職場の問題であれば、必ず助けてくれる人がいるはずです。仕事の内容であれば、その経験が自分の将来に役立つことがわからないだけかもしれません。多くの意見を聞き、冷静に、客観的に自分を見つめることが必要です。

 その過程を経ての結論であれば、進路を変えることも選択肢の一つであって良いと思います。そのためにも、本校で得た友人を大切にしてください。学生時代の友人は遠慮なくアドバイスしてくれる一生の友です。人に頼ることができる人は頼りになる人に必ずなります。皆さんも、人の痛みがわかる、頼りにされる社会人になってください。

 238名の進路は多様です。どうか皆さんには、何事にも関心を示す姿勢を持ち続けて、自らの可能性を拡げ、学び、必ずや夢の実現を果たして欲しいと思います。

  皆さんの母校 秩父農工科学高校 は、これからも皆さんを見守り続けます。皆さんの健康と今後のご活躍、そして輝かしい未来を心より祈念し、式辞とします。

   

   令和7年3月8日

       埼玉県立秩父農工科学高等学校 校長 服部 修